カテゴリーCategory
Recruit Site お問い合わせ
シェア
Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加

教えて!先生!

2020.7.8

教育現場インタビュー#1【前編】コロナ禍でも学びを止めない!全国一斉休校初日からオンライン授業を続けた中学校。

こんにちは。メガスタプラス編集部です。2020年2月27日。安倍首相は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、全国の小中学校および高校に対して、一斉休校要請を表明しました。
学ぶ機会が、突然失われてしまったのです。

一斉休校の要請を受けて、全国の学校は苦渋の決断を強いられました。授業をしたいけどできない。学びを止めたくないが仕方がない。学校の先生をはじめ、保護者のみなさん、そして子どもたち自身が残念に思ったことでしょう。

そんな休校要請の初日から、オンライン授業に切り替えた中学校がありました。新潟県上越市にある国立大学法人上越教育大学附属中学校です。どうしてすぐにオンライン授業を実施することができたのか。教員のみなさんはどのようなシステムを活用してオンライン授業を行なっているのか。ICT推進担当でいらっしゃる大崎先生にお話を伺いました。

メガスタプラス編集部の拠点は東京です。取材は、もちろんオンラインにて行いましたので、どうぞご安心ください。

すでに休校が解除され、全国の学校で登校が再開していますが、第二波が訪れて、またいつ休校になるかは誰にもわかりません。今後のためにもオンライン授業実施のポイントを掴んでいただけたらと思います。
<前編のもくじ>

◆ 準備期間は1日。職員室には不安の声。「チャンスに変えよう」
◆ オンラインで実施された授業の中身とは?
◆ 一人一台iPad導入の背景。あらゆる表現で活躍のチャンスが広がる。


ICT推進担当かつ理科担当でいらっしゃる大崎貢先生。
お忙しい合間を縫って、オンラインインタビューに応じてくださいました。

準備期間は1日。職員室には不安の声。
「チャンスに変えよう」。

―メガスタプラス集部:貴校の取組を知りまず驚いたのが、休校要請を受けた初日からオンライン授業を開始されたという点です。オンライン授業の開始を決断するまで、どんな経緯があったんですか?

大崎先生:全国一斉休校の可能性が見えたのは、2月27日の午後6時過ぎ。その日は職員会議がある木曜日で全職員が学校に残っていたんです。おそらくこれは休校になるだろうと。当時の副校長から、「本校はオンラインで授業ができる、大崎先生頼んだよ」と言われまして(笑)。というのも、本校では、2016年から一人一台iPadを活用した学びを推進していたんですね。

新型コロナウイルスの影響を考えれば、生徒の「安心・安全」を確保するため登校はさせられない。しかし、「学習の保障」はしたい。職員室ではオンライン授業に対する不安の声も挙がりましたが、私としてはiPadを活用し、生徒の自己調整と創造性(クリエイティビティ)をどう育てるか?を追求する良い機会だと思いました。準備期間はたった1日。それでも、やらないという選択肢はありませんでしたね。

―メガスタプラス編集部:準備期間1日…。驚くべきスピード感ですね。3月2日の初期フェーズでは、どんなシステムを使ってオンライン授業を始められたのですか?

大崎先生:最初に使用したシステムは、ZoomとGoogle Formです。Google Formで健康状態に関するアンケートをとり、Zoomで教員と各学年の生徒(約100名)をつなげて、朝学活や授業を行いました。Zoomは私の授業では使ったことがありましたが、他の教員が普段から使っていたわけではありません。まずは試しにZoomを使ってみて、何か問題があったとき、Google MeetやLINE WORKSといったほかのアプリケーションに代替できるよう選択肢は広く準備しておきました。


Zoomを使った朝学活の様子

―メガスタプラス編集部:Zoomを使った朝学活、生徒たちの反応はいかがでしたか?

大崎先生:3月は緊急事態宣言が発令される前でしたから、親御さんは仕事で外出していて、生徒たちは家で一人だったりしたんですね。人と話す機会が減っていたので、なるべく受け身の授業ではなく生徒一人一人が話せる場を作ろうと、朝学活では4名ほどの小さなグループに分けて雑談タイムを設けました。

―メガスタプラス編集部:授業はどんな形で行われたのですか?

大崎先生:3月は「午前3時間・9教科の学習コース」を実施することで、学習保障と学習習慣の確立を目指しました。iTunes UやGoogle Classroom、ロイロノート・スクールなど既存の学習ソフトも活用しましたよ。

―メガスタプラス編集部:先生たちの反応はどうだったんですか?すぐにオンライン授業に切り替えることができたのでしょうか?

大崎先生:オンライン授業は初めての体験。でも、うちの先生たちは楽しんでチャレンジしてくれました。もともと、グループワークや校外活動などが活発な学校ですし、年に一度、全国から教職員が見学に集まる「研究授業」を行っているという背景もあって、普段から挑戦的な授業を行っているんですね。それぞれがオリジナリティ溢れるオンライン授業をつくってくれました。

オンラインで実践された授業の中身とは?

―メガスタプラス編集部:具体的にオンライン授業の「中身」について教えてください!いわゆる遠隔での授業というと、あらかじめ撮影しておいた動画を流すのが一般的だと思いますが・・・。どんな授業を行ったんですか?



オンラインで行われた音楽の先生によるライブ授業

大崎先生:一部、録画した授業を流したりもしましたが、多くはライブで授業を行いました。たとえば音楽の授業では、一学年107人全員で声出しを行ったあと、Zoomの「ブレイクアウトセッション」という機能を使って、一人ずつ個人レッスンを受けられるようにして、先生と生徒が個別にコミュニケーションをとれるよう工夫しました。

―メガスタプラス編集部:家にいながら歌の個人レッスンを受けられるなんて、贅沢ですね!

大崎先生:私が裏側で操作のお手伝いをして大変だったんですけどね(笑)。私も「先生たち、すごいな!」と驚くような授業もありました。生徒たちが運動不足にならないよう保健体育科の教員が、「ふぞくトレーニングチャンネル」なるものを立ち上げて、YouTuberばりにヒット作品を生み出しているんです(笑)。確実に動画編集の腕を上げています。


体育の先生による「ふぞくトレーニングチャンネル」

―メガスタプラス編集部:体育の先生が動画編集!それはすごいですね。新型コロナウイルスが流行する前から、iPadを用いた革新的な授業を行っていらっしゃるそうですが、具体例を教えていただけますか?

大崎先生:はい。当校は「探求学習」に重きを置いています。iPadというツールはこの探求学習を行う上で、とても便利な道具なんです。たとえば、音楽の授業では「夏は来ぬ」という曲の世界観をイラストなどで表現する「探求学習」を行いました。これは生徒がiPadを用いて「夏は来ぬ」の歌詞やメロディをもとに世界観を表現した作品です。


生徒による作品(iPadのみで描いたというから驚きだ)

―メガスタプラス編集部:音楽の授業で、絵を描く!教科の枠組みに捉われない教科横断的な授業を行っていらっしゃるんですね。他にも特徴的な授業はありますか?

大崎先生:そうですね。総合的な学習の時間では、「春のベストショット」という企画を行いました。今年度は隣接する高田城址公園を散策することができないため、それぞれがiPadで自宅の周りの「春のベストショット」を撮影する。学年で開設したインスタグラムのアカウントに写真を投稿し、上越の魅力を市外の方や外国の方に紹介するという取組みです。

本校は徳川家康の六男である松平忠輝公の城跡に整備された「高田城址公園」の敷地内にあり、春になると観桜会という大きな桜祭りがあって、全国から大勢のお客様が訪れるんです。「春のベストショット」は「おもてなし」についても学べる課題です。


生徒それぞれが撮影した「春のベストショット」

ーメガスタプラス編集部:インスタグラムで写真投稿ですか。イマドキの子どもたちはSNSを当たり前に使いこなしていますから、授業で使うのも自然なことかもしれませんね。こうした探求学習を休校中にも続けようとされたのには理由はありますか?

大崎先生:休校中も、オンラインでも、「探求学習」にチャレンジしよう!と取り組みました。オンライン授業が始まった当初は、絶対にやらなければならないマストの課題よりも、探求学習の課題を多く実施しようと話していたんです。その方が楽しんで取り組めますからね。

一人一台iPad導入の背景。
あらゆる表現で活躍のチャンスが広がる。

ーメガスタプラス編集部:そもそもの話になってしまいますが、なぜ上教大附属中学校では、一人一台iPadを導入しているんでしょうか?

大崎先生:導入の歴史を遡ると話は長くなりますが(笑)。私たちはICTの活用だけをウリにしているわけではありません。本校では1990年代から「総合的な学習を研究ベースで追求する」という伝統があります。iPadはあくまでもツールであり手段なんです。

2011年から2016年にかけては総務省のフューチャースクール推進事業の実証校として、全生徒・職員にWindows7のタブレットPCが導入されていましたが、機動力の高さからiPadに切り替えました。だって、教室の外に持って出たいじゃないですか。なんで外に持っていきたいか?「探求できるような授業」を大切にしたいというブレない信念があるからです。

―メガスタプラス編集部:iPadなどの機器の導入が先なのではなく、「探求学習」の実現を突き詰めた結果、iPadという道具に行きついたということですね。

大崎先生:相性がよかったんでしょうね。

―メガスタプラス編集部:タブレットが、子どもたちの能力や才能の開花に役立つこともあるんですか?

大崎先生:もちろんあります。iPadを取り入れた授業の中では、国数社理英という基本の5教科であっても、生徒たちの創造性(クリエイティビティ)を発揮する機会を設けるようにしているんです。

言語的、論理的な表現のみ評価されることが多かった既存のドリルやテストでは良い成果を残せなかった生徒たちが、歌や音楽、絵といったさまざまな表現方法を組み合わせることで活躍のチャンスを広げているんです。グループ活動では、自分の得意な表現を担うことで、互いに補い合っているという実感をもちます。すると、「もっと表現していいんだ!」ということがわかって、言語活動も高まっていくんです。iPadがあることで、「いろいろな表現が認められる」。これが大きな魅力だと思います。

―メガスタプラス編集部:お話を伺っていると、先生方のクリエイティビティもどんどんと進化されているように感じます。

大崎先生:その通りですね。チャレンジ精神あり、競争心あり。動画を作り始めたら、我こそは!とこだわって作っていらっしゃいました。職員の数が少ないので声が通りやすいですし、教科の枠組みを超えて、手立てを共有できるのは大きいですね。

―メガスタプラス編集部:iPad活用の魅力がわかったところで、前編はおしまい。後編では、withコロナの世界では当たり前に実施されるであろうオンライン授業の実施ポイントについて伺いたいと思います。後編もお楽しみに。

この記事の執筆者:
メガスタプラス編集部