バンザン社長に聞く、オンライン家庭教師に挑む理由【解決できる社会課題編】
2020.8.22
教育現場インタビュー#2【後編】 コロナを受けて教育はどう変わる?—インフィニティ国際学院大谷学長に聞く。
- 高校3年間を通して世界20カ国以上を旅するカリキュラムを提供しているインフィニティ国際学院。提携する通信制高校と併用することで、通常の高等学校と同じように高卒資格を取得しながらも、海外でフィールドワークを何度も体験できる仕組みを取り入れているそうです。
この学院の発案者でもあり、現在は学長でもある大谷真樹さんに、「今こそ必要な教育とは何か」、そして「Withコロナ、Afterコロナの教育の姿とは何か」をうかがいました。
世界をオンラインで旅すれば、
むしろたくさんの国へ行ける。
編集部:—新型コロナウイルスの恐怖は、国と国との人の行き来を大きく減らしました。日本でも、外国人観光客はめっきり見なくなりました。世界各地でのフィールドワークを根幹としているインフィニティ国際学院にも大きな影響を与えたと思います。そのあたり、いかがですか?
いやあ、とっても大変でしたよ。現地へ行けないですからね。そこで考えたのが、「オンライン世界旅」です。世界中、たとえばアフリカや中東の国々とオンライン会議をつないで、現地で活動している方のエピソードを聞き、擬似体験をする会です。
オンライン世界旅。オンラインだからリアルタイムで世界中と繋がることが出来る。
それが苦肉の策で始めたつもりが、むしろ2ついいことを発見しました。1つ目はたくさんの国の擬似体験ができる点。今までのカリキュラムでは、いくら世界中とはいえ、せいぜい年間20カ国しか訪問できないところが、オンラインでつなげれば毎日違う国へ行けます。もう1つが、最新情報が聞ける点。その場へ向かう時間をロスしないで、現地人からタイムリーな情報が聞けます。
2つともよく考えれば当たり前のことではあるのですが、今まで五感を重視するあまり気づかなかったオンラインの可能性です。コロナが落ち着いたら海外でのフィールドワークも再開するつもりですが、オンラインと併用することでより広く世界を知ることができると思います。
今こそ、次世代リーダーが
日本を深く学ぶチャンス。
編集部:—フィールドワーク自体は現在、ストップしていますよね。「オンライン世界旅」では行動力盛んな学生はうずうずしていることと思います。その点は、どうやって解消しているのですか?
確かにまだしばらくは海外に行けるような状況ではありません。そこで、9月から国内研修プログラムを用意しました。本当だったらアフリカをエジプトから南アフリカまで縦断する予定を、北海道は旭川から九州までの日本縦断に変更しまして。これもコロナがきっかけでは気づいたことではあるんですが、「海外バカになってもしょうがない」。僕自身、日本を見たうえで海外も見る重要性に気づかされる機会になりました。
日本の現状を見て、世界の現状を見て、また日本に帰ってきて比較してこそ、日本の課題や未来を案ずる気持ちが生まれるだろうと。自分の地域のコミュニティと世界を知っただけでは、日本全体のことはわかりません。普段行かないような地方の過疎地域などを巡り、それぞれの地域特性、地域課題をまさに五感で経験するためのプログラムです。
編集部:—それはいい機会ですね。確かに私も、いまだに日本全国47都道府県を制覇してないのが心残りなんです。それで「日本」を語っても、説得力ないですよね。
そうなんです。将来日本を背負うことになる子どもたち、彼らが本当の意味でリーダーになるためには、まず日本を見てまわることが不可欠。海外に行けない分、留学を予定していた子など、学生たちにはこの機会を利用して日本を深く知ってもらいたいですね。
日本と海外を両方知ることで、もちろん日本の課題もわかりますが、日本のよさだってわかるんですよ。うちの1年生は英語学習のためにフィリピンに行くのですが、そうすると日本のトイレの素晴らしさに気づいたらしくて。「TOTOの社長に会って話したい」「世界中に日本の水洗トイレを教えて歩きたい」と言っていました。これこそが各地の違いを肌で体感して生まれる探究心や行動力ですよね。
オンラインの可能性は無限大。
個別最適化された学習を、日本中へ。
編集部:—いろいろとインフィニティ国際学院のことを聞いてきましたが、最後に教育業界全体について聞きたいです。今、コロナの影響を受けて大きな変革が起きているのは、全国どの教育現場でも変わらないと思います。この変革の波をどう考えていますか?
僕も自分の学校と照らし合わせて気づいたように、世の中のお父さんお母さんもそれぞれの家庭の状況に照らして、オンラインの可能性に気づいたことと思います。コロナ自体は悲劇ですが、外出自粛や休校が長かっただけに「学校って何だろう?」「授業って何だろう?」と考える時間にもなりました。
そこでスポットライトを浴びたのが、オンライン教育。それ自体は前からあったんですけれど、勝手にネガティブイメージを持たれていた。「えー、本当にオンラインで大丈夫なの?」って。けれど、実際に使ってみることで、その良さに気づけましたよね。特に何がいいかって、教室でみんなで同じスピードで同じ内容を学習するのではなく、自分のスピードで進められること。個別最適化とでもいいましょうか。在宅でできますしね。
大谷学院長、オンラインインタビューの様子。
編集部:—しかもその個別最適化を、ネットさえあればどこにでも届けられるのが強みですよね。
まさにそこです。インフィニティ国際学院設立には「地方に住む生徒のドロップアウトを防ぐ」「地方と都会の教育格差をなくす」という目的もあり、全国から希望者が集まったことでその実感はあったのですが、1つ心残りだったのは定員があることなんですよ。定員以上の子どもは救えないし、しかも学費も決して安くはない。
でもオンライン教育なら比較的安価で定員なく全国に届けることができますよね。今までの公立学校、私立学校、塾、予備校、そして僕らのような新しいかたちの学校でも救えなかった層にまで教育を届ける。そんな役割をオンライン教育には期待しています。
たとえばの話ですが、人口5,000人の小さな地域では塾というビジネスモデルは成立しないんです。地元学校の勉強以外に選択肢がない。広域通信制の新しいタイプの学校へ行く情報や経済力にも欠ける。もどかしいことです。そうした過疎地域でも、オンライン教育なら都会と同じものが安価に提供できる。広まっていけば、いずれ日本の教育も少しは変わる。60歳を前にして、ついに日本の教育業界に希望が見えてきました。
編集部:—メガスタディもまさに、オンライン家庭教師サービスとして地方の教育格差是正をめざしています。そんななか、とても励みになるお話ばかりでした。インフィニティ国際学院のように、オンラインかオフラインかは0か1かではなく、バランスよく併用可能なものとして広まっていくと嬉しいです。今回は、貴重なお話ありがとうございました!
メガスタプラス編集部