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教えて!先生!

2020.12.26

#教えて先生! 大人気のワケ。倍率30倍!「武蔵野大学データサイエンス学部」【前編】

こんにちは、メガスタプラス編集部です。滋賀大学・横浜市立大学に続き、2019年4月に武蔵野大学「データサイエンス学部」が開設され、昨年の志願倍率はなんと30倍以上(累計)。
注目されているデータサイエンスのことを学部の取組みも含め、武蔵野大学 データサイエンス学部 学部長 上林憲行(かみばやし・のりゆき)氏に直接お話を伺いました。

注目したい職業、
データサイエンティストとは?

(左から)武蔵野大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科 学科長 中西崇文(なかにし・たかふみ)氏、武蔵野大学 データサイエンス学部 学部長 上林憲行(かみばやし・のりゆき)氏

編集部:私大で初のデータサイエンス学部を開設されたという事ですが、まずは「データサイエンス」のことを教えていただけますか?

データサイエンティストは特定の技術や職種にとどまらず、データ社会の浸透はあらゆる社会で活躍できる職業だと思います。大なり小なり、ネットを活用すればデータが集まりますから、データ分析や活用は世界中の企業や社会のニーズがあります。データの分析結果に基づいて、消費者のことをもっと知ることが出来るわけですね。このメリットを享受するためには、テクノロジーによって加速される大量のデータを解釈する必要があり、そこで求められるようになったのがデータサイエンティストです。データサイエンスの学びは、これからの社会で多くの業界で仕事に活かせる知識でありスキルであり、21世紀を担う大事な知識・スキルになります。

「データサイエンティスト」のキーワードを求人サイトで検索すると非常に多くの件数がヒットしますよ。データサイエンスがより期待されている業界もありますが、我々の学部ではあえて分野を特定するようなことはしていません。時代は、AIの機械学習を使って、様々なソリューションを提供出来るようになっていきますし、誰にでもイノベーションを起こせる可能性を持っています。

実はこの分野において、日本は諸外国と比べて、大きく遅れを取っています。米国では大学に統計学の学部が30もあるのに、日本の大学には学部自体がないことも。Society5.0の現代、データを評価してエビデンスで意思決定をすることが企業でも非常に重要ですから、データサイエンスの世界が注目され、期待されているわけです。

文系科目のみでも受験可能!
問題解決の面白さを知って欲しい

編集部:武蔵野大学データサイエンス学部の学びはどんなものですか?

「データサイエンス学部」自体は新しい学部でフレッシュですが、大学のこれまでのやり方を踏襲するのではなく革新しようと、スマートラーニングという新しい学びのスタイルを取り入れています。人工知能の学問、数学やコンピュータサイエンスの基礎を学ぶことはもちろんですが、「実際にビジネスに生かせる、これまでにないカリキュラム」を取り入れています。

統計学を学ぶ大学でも、1年生の時にまずは「微分積分」「線形代数」など、数学を徹底的にやるというところが多いのではないでしょうか。2年生以降で実践的になっていくカリキュラムなのでしょうけれども、講義をずっと聞いているだけでは、面白くないですよね。数学に抵抗感を感じている人が多いのも事実。多くの人に学んでもらえるよう文系の人でも受験できる大学を目指しています。情報系と言うと「数学が出来ないといけない」と考える人は多いかもしれませんが、文系の人にも積極的に学ぶことを考えて欲しいと思っています。

私たちの学部では1年生の時に数学はやらずに、AIツールを使って課題解決することを実践で経験してもらいます。例えば、Googleが開発したTensorFlowを使って、実際に問題解決に取り組んでもらいます。それにより、AIツールを使って問題を解決する「面白さ」や「醍醐味」を感じてもらうことが出来るのです。

■TensorFlowとは…人工知能(AI)を作る上でよく使われているオープンソースのライブラリ。個人・商用を問わず誰でも無料で使用できる為、大手企業でも使用して急速に開発が進められている。

すると学生自身から「TensorFlowを利用して、こういう課題解決が出来ないだろうか?」というアイデアが生まれやすくなり、問題意識や関心事がすでに作られている上で必要となる知識の学習、例えば「線形代数を学べば、こういうことが出来るようになるんだな」という事を理解して、学習にも取り組めるようになるわけです。2年生になって初めて数学的な原理を学んで、プログラミングの学習をしてもらうというような流れですね。座学で一方的に先生の話を聞いて、「紙」と「鉛筆」で「いつ使うの?」と思うような計算や方程式の話をずっと聞かされて理解度テストで評価されるだけなんて、数学嫌い!となってしまう人が出て当然なんですよ。

座学なし、テストなしのカリキュラム
「主体的に学ぶ楽しさ」を知る

未来創造プロジェクト VR上でのゼミ風景 ※「Bigscreen Beta」使用

編集部:武蔵野大学データサイエンス学部ならではの学修スタイルとは、どんな風に学べるのでしょうか?

学びの体系的理論は、情報学習論に準じています。エティエンヌ・ウェンガーなどの提唱する「学びの実践共同体」、「状況学習理論」などを教育指針としています。学校の集団教育の中ではなく、社会の中で世代を超えた学びのスキルをどのように習得するか、そこに本質的な意味があるということです。参加型、グループ協調学習、プロジェクト型学習を基軸に、科目を超えた学習コミュニティも作っています。具体的にはSlackを活用し、学生と先生全員参加の学習コミュニティを構築して、グループ活動の進捗を確認したり、質問などにも利用しています。履歴も残りますので、便利だと好評なんですよ。

またすべての科目でゲストスピーカーを呼び、データサイエンティストから話を聞く事で、ビジネスバリューのある価値創造に取り組んでもらっていますし、2年生から早期インターンシップも実施しています。当初、企業側から「2年生ではまだ無理なのではないか」という声もありましたが、実施してみると結果的に高い評価を受けています。国際学会でも1年生が発表し、国内学会では受賞する学生も複数出ています。やはり、能動的な学修スタイルが結果を生み出せています。

カリキュラムを進める上で、我々学部側から、各先生にお願いしていることは、「教えない」ということなんです。教えすぎてしまうと、他律的になってしまうんですよ。これを全員の先生に徹底してもらっています。一部の先生が旧態依然の教える教育をしていたら、新しい学修スタイルが成り立ちませんので、先生全員に徹底してもらっています。先生は教えない、学生は協調学習をする。そして、失敗から学ぶということです。失敗しないように教えるのではなく、失敗から学ぶことを見守ることが先生の役目です。

この学修スタイルで指導を始めた時、ある学生から「先生は教えてくれないから、不親切だ」と言われたことがありました。従来の学修というものは、静的で脱文脈な知識の習得ですよね。本当の世の中の課題というのは動的で文脈依存ですよね。グループ協調活動を通じて、答えのない問題を自分で考え、グループで取り組む、より実践的な学びです。ちなみにテストも行いません。成果は、アウトプットです。成果を他者にデモンストレーションできるかという点で見ていきます。

編集部:テストなし、座学なしなんて、驚きました。言われてみれば、長時間、話を聞き続けるスキルよりも、考える力や人に説明する力を高める必要があったと思います。

VUCAの時代、対応できる人材育成が始まっていることを感じ、教育に変化を感じました。後半では、どのような変化が学生に起こったか、引き続きお話を伺いたいと思います。

この記事の執筆者:
メガスタプラス編集部