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ニュース

2020.6.24

中国で利用者2億人突破!IT先進国に学ぶ、オンライン教育の意義

こんにちは。メガスタプラス編集部です。今回は、海を渡って中国からのニュースです。

2019年6月に中国政府系の組織が発表した「第44回 中国インターネット発展状況統計」によると、中国全土におけるオンライン教育利用者数はなんと2億3246万人。

ちなみに2018年12月時点では2億123万人。2017年12月時点では1億5518万人。毎年爆発的に増加していて、特にここ2年は2億人を突破していることがわかります。

また、同じ調査には中国全土のインターネット利用者数は8億5400万人とあり、これはつまりインターネットを利用する4人に1人以上がオンライン教育を受講している計算。中国のオンライン教育市場の規模の大きさがうかがえます。

どうしてこんなに爆発的に増加しているのでしょうか? また、オンライン教育の広がりがどんな結果にあらわれているのでしょうか? くわしく解説していきます。

中国が6年ぶりの1位!学習到達度調査2018が結果発表。

世界79の国と地域の、15歳児の学力を調査・比較する学習到達度調査(PISA)。読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3つを測定しています。直近2019年冬に発表された前年2018年の結果(PISA2018)は、このようになりました。


(国立教育政策研究所のレポートより引用)

日本のメディアでは、日本の読解力低下がニュースになっていましたが、注目すべきは1位。3つの能力ともに、北京・上海・江蘇・浙江といった中国の各地域が1位になっています。また、同じく中国に属するマカオ、香港も高順位。中華系の多いシンガポールは2位。ランキング上位を占める中国の存在感が印象に残ります。

もちろんこの結果のすべてがオンライン教育のおかげ、というわけではありませんが、最近の中国の教育水準の高さは無視できません。そのひとつの理由が、オンライン教育の普及だと考えることはできるのではないでしょうか?

急激に進む中国の教育改革。転機は2009年?

実は中国、2009年にもPISAの調査で1位となっています。この年、中国では義務教育の全土への普及が推し進められ、全人口の99%が住む地域に義務教育が行き渡りました。義務教育の普及100%の日本では考えられないことですが、実はそれまでの中国では義務教育の行われていない、小学校もない地域はめずらしくありませんでした。将来も経済発展を続けていけるよう、優秀な人材育成のため、教育部と呼ばれる政府機関が数々の改革を断行したのです。

義務教育が99%の広がりを見せた後、今度は規模ではなく質の向上をめざしました。「資質教育」と呼ばれる子どもそれぞれの素質に合わせた教育です。この改革は現在も継続中。日本以上に国をあげて教育改革の手を打っています。オンライン教育もその一環。現在の中国は「インターネット+教育」を掲げ、オンライン教育市場の促進に力を入れています。

たとえば教育部が発表した「2019年重要任務」には、全国の小・中・高等学校のインターネット接続率を97%以上に高めること、通信速度の確保、学校現場での体制構築、関連法の制定、大学授業のオンライン化などが盛り込まれていて、スピード感を持って中国が教育のオンライン化を進めていることがわかります。

また、この熱の高まりを受けて、たくさんのEdTech(教育テクノロジー)企業が登場。受験戦争が日本以上に激しい中国では、より良いサービスを求める保護者に向けて、多種多様な現地企業がしのぎを削っているようです。こういった官民一体となった盛り上がりが、中国のオンライン教育利用者数を2億以上にまで伸ばしました。世界に先駆けて中国で本格利用された次世代通信5G。インターネットの益々の普及や発展も相まって、中国のオンライン教育はこれからも拡大を続けるでしょう。

それでもまだまだ縮まらない教育格差。
だからこそ、オンライン教育だった。

では、これほどまでに中国がオンライン教育にこだわる理由はなんでしょうか? それは中国の教育格差が、日本以上に深刻な問題になっているから。義務教育がほぼ普及したからといって、格差是正の道のりはまだまだ縮まらないようです。

アメリカのスタンフォード大学の調査によると、中国の都市部では9割以上が高校に進学し、大学受験競争に参加するのに対し、農村部では6割以上が高校に進学せず、しかも乳幼児の半数以上の知育が遅れているといいます。教育部が進める教育改革も、その補助金がバランスよく全土に配られたというわけではなく、教育水準の高い学校は地方には限られた数しかないようです。

依然としてぬぐえない、地方と都会の教育格差。先ほどのPISAのランキング上位に位置していた北京・上海・江蘇・浙江、マカオ、香港は、すべて都市部。もし農村部も含めてテストをすれば、もっと順位が低いのではないでしょうか?

地方で質の高い教育は受けられない子どもたちはどうすればいいのか? 都会に出て、質の高い学校に通えばいいのか? 実は前世紀に実施されていた地方から都会への移住規制の名残りもあり、中国人の都会移住のハードルはかなり高いです。たとえば戸籍制度の不備から、都会へ移住しても日本では受けられるような行政サービスが受けられないことも多くあります。大学によっては、地方出身者の合格最低点を都会出身者よりも高く設定するなどの、地方差別もれっきとして存在するようです。しかも、中国の方言は日本よりも複雑です。都会と地方の距離は物理的にも、精神的にも遠い。

それなら、地域在住の子どもたちはどうすればいいのか? 中国政府なりのその答えが、オンライン教育の進展なのだと思います。生まれついた地方にいても、都会と同じ高い水準の教育を。地元に有数の優秀な講師の授業を地域全体へ広げる。大学の講義を広く国民が受講できるように。限られた先生を移動せずに多くの生徒に届けることができる、それがオンライン教育の強みなのです。

地域格差の程度は違えど、日本も中国と同じ問題を抱えていることは事実。少子化のあおりを受けて、地方から良い学校、良い先生、良い塾や予備校が減っています。だからこそ、日本にもオンライン教育が必要なのです。

—編集部:※本記事は以下を参考・引用しました。

■「第44回 中国インターネット発展状況統計」クララオンライン
https://www.clara.jp/wp-content/uploads/2019/09/20180925_CNNIC2019.6_Claraonline.pdf
■「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」国立教育政策研究所
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/01_point.pdf
■「中国のオンライン教育利用者総数が2億人を突破」人民網日本語版
http://j.people.com.cn/n3/2019/0312/c94475-9555284.html
■「インターネット教育に沸く中国の教育市場」日本貿易振興機構
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/9715817cd88c5466.html
■「【世界を読む】格差を解消できない中国の教育…背景に特有の戸籍制度」産経新聞
https://www.sankei.com/west/news/180509/wst1805090004-n1.html

この記事の執筆者:
メガスタプラス編集部